博士とまさぶろう
- 2017/04/23
- 08:47
『博士とまさぶろう~バイバイ前島くん~』
♂:博士、前島
不:まさぶろう
博士(男・年齢不詳)
何かを研究している博士。博士号があるかどうかは不明。
不老不死の様な事を述べているが、詳細は不明。
本名も不明。謎だらけの男。
見た目だけは30代。
まさぶろう(オス・8歳)
博士が飼っている自死願望に塗れた陰鬱モルモット。
「コロセヨ」が口癖。最早鳴き声。
なぜ人語を介せるかは不明。
前島ソウタ(男・享年26歳)
会社員。出勤中に博士に拉致されて博士の研究室に軟禁される。
なかなかアレな経歴を持つが、最後は自分からガス室のドアを開けてしまい、死亡する。
どこかの研究室。
何に使うかもわからない機器、何語で書かれているかもわからない書籍が綺麗に整頓されている。
手術台の様な卓に寝かされている前島、目を覚ます。
前島「う……くっ……こ、ここは?」
博士「おやおや、お早いお目覚めだね。……ふむ、テキトーにつくった睡眠薬の調合がちょいと甘かったな」
前島「す、睡眠薬? ……あれ、俺は会社に」
博士「そうだよ前島くん。キミは間違いなく出勤中だった。けれど今はボクのオペ室に来てもらっている」
前島「オペ……? ちょっと、俺は全然健康で、手術なんか」
博士「あらら、こんな状況で、キミは私を医者と思っているのかね」
前島「え?」
博士、ちょっと考える。
博士「じゃあそういう事にしておこう。パンパカパーン、はい、私は医者です。キミには重篤な疾患が見受けられましたつきましては」
前島「ふざけんな! 何がそういう事にしておこうだよ!」
まさぶろう「コロセヨ……」
前島「いやそこまではしないけどさ」
まさぶろう「コロセヨ……」
前島「こ、殺しはしないよ。ただあんたが俺を解放してくれれば……」
博士「前島くん、キミは誰と喋ってるんだね?」
前島「誰って?あんた決まってるだろ」
博士「ぷっふぅーっ、ハズレー。正解はこちら、まさぶろうクンと喋っているのでしたー」
ジャーンと出されたのはモルモットのまさぶろう。
まさぶろう「コ、コロセヨ……ハヤクコロセヨ……」
前島「うわああああ!! しゃしゃしゃ喋るモルモットだぁーっ!!」
博士「おおお偉く古典的な驚き方ありがとう。最近ではやたら現実を直視しない若者がいるから嬉しいよ」
まさぶろう「コロセヨ……ボクヲコロセヨ……サッサト……」
博士「まさぶろう。キミはさっき濃硫酸と濃塩酸のダブル入浴から生き返ったばかりじゃないか」
前島「なんだそのヴァイオレンスなスパは!」
博士「説明しよう」
前島「しなくていい」
博士「この子はまさぶろう」
前島「するんかい!」
博士「あれは7年前。ボクが脱サラして1年経ったある日のことだ。海辺を散歩してたら人魚がいてね」
前島「人魚!?」
博士「浜に打ち上げられて死にそうになっててね。助けてあげた訳だよ」
前島「ぜってーウソだ」
博士、人魚を演じる。
博士「『あぁ親切で白衣の似合うイケメン様。どうかお礼に私をお召し上がりください』」
前島「尻軽人魚か!」
博士「まぁ据え膳ですからお召し上がった訳だよねー」
前島「下ネタかよ!」
博士「三枚におろして」
前島「文字通り召しあがったのか!?」
博士「おろしてる最中『な、んで……』って言われたのが謎だったんだよね」
前島「それ人魚とコミュニケートできてねーから。人魚死ぬつもりなかったから」
博士「まぁおろし生姜と醤油で美味しく頂いた訳だけど、途中でお腹いっぱいになってしまってね。残りのお肉をその当時飼い始めたモルモットに食べさせたら、まぁこれが見事に不老不死になっちゃってー。なんという生命の不思議」
前島「人魚食ったんだよ! モルモットが! どこも不思議じゃない簡単明瞭!」
博士「ほんっとに何しても死なないのこれが。いやぁ当時は半狂乱になるくらい殺しまくったよーギロチン首絞めハンマー自動車毒ガス銃火器粉塵爆破」
前島「頭おかしいだろ……」
博士「今ではすっかり他殺願望に塗れた、愛すべき陰鬱モルモットになりましたとさー」
まさぶろう「コロセヨ……」
前島「それ多分あんたが植え付けたんだよ」
博士「と、いう訳だ。まさぶろうクンを殺すだけでは快楽にならなくなってしまった……」
前島「ま、まさか……」
博士「そのまさかだよ……」
前島「や、やめろ。お、俺が何したっていうんだよ! やめて! 殺さないで!」
博士「殺しはしないよー。ただ、まだまさぶろうクンにはまだ、食べさせてないものがあってね……」
前島「う、うわ……うわあああああああああああ!」
博士、突然前島に向かってクラッカーを放つ。
博士「じゃーん。前島くん、誕生日、おめでとーう」
前島「へ……へ?」
博士「テッテレーン。ドッキリ大成功。前島くん、キミは今日で26歳になった。しかし祝ってくれる彼女も同僚もいないという事、私は調べさせてもらっている。僭越ながらこのボクが、みんなに代わって、祝わせてもらおう。ハッピーバースデー、前島くん」
前島「あ……あの」
博士「あぁ、ボクの事は博士と呼びたまえ。白衣も似合っているだろう?」
前島「博士……こんな、見ず知らずの俺に……」
博士「去年も、一昨年も、仕事に追われ、誰も祝ってくれなかったんだろう?」
前島「!?」
博士「独り身の辛さ、ボクだって知っている。だからこそ、ボクはこうして、訴えているんだよ……人と人との繋がりを……」
前島「博士……」
まさぶろう「イ、イワワ、セロヨ……」
前島「まさぶろう……」
博士「どうやら、まさぶろうクンも、キミに懐いたみたいだ。さぁ、パーティーの準備は整っている。君にだって有給くらいはあるだろう。今夜は大いに飲み明かそうではないか。」
前島「な、なんか、そういう事なら、ちょっと、飲んじゃおっかな……」
博士「そうしたまえ」
前島「俺、嬉しいんです……すっごく。子どもの時から、両親が共働きで……妹とか弟もいたから、俺、しっかりしなきゃってなってて……だから、なんか、こういう事あんまなくって……」
博士「うんうん……さぁ、向こうがちょっとしたパーティー会場になっている。先にいきたまえ。ボクは、キミにプレゼントを持って行ってあげよう」
前島「博士、先に言ったら、ダメじゃないっすかー」
博士「おや? しまった、口が滑った。ハッハッハ」
前島「あはは……じゃあ、先に行って、待ってます!」
まさぶろう「ツイテ、イカセロヨ……」
前島「もちろん! お前もありがとうな! まさぶろう!」
研究室の自動ドアーをくぐるまさぶろうと前島。
博士「……」
博士、どこからか手帳を取り出し、内容を読み上げる。
博士「前島ソウタ26歳。父親は過労死、母親は入院生活。自身も出会い系サイトに引っ掛かったのとマルチ商法に失敗し、多額の借金を負う。兄弟は成人しているが兄とは不仲。ちなみに素人童貞……まぁ、経歴はちょっとアレだが、まさぶろうクンが食べる初めての食材だ。光栄に思ってもらいたいね――あ、しまった。あっちはガス室だった。パーティー会場は反対側だ――今度こそおやすみ。前島くん」
終。
お疲れ様でした。
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後日覗きに参ります。
♂:博士、前島
不:まさぶろう
博士(男・年齢不詳)
何かを研究している博士。博士号があるかどうかは不明。
不老不死の様な事を述べているが、詳細は不明。
本名も不明。謎だらけの男。
見た目だけは30代。
まさぶろう(オス・8歳)
博士が飼っている自死願望に塗れた陰鬱モルモット。
「コロセヨ」が口癖。最早鳴き声。
なぜ人語を介せるかは不明。
前島ソウタ(男・享年26歳)
会社員。出勤中に博士に拉致されて博士の研究室に軟禁される。
なかなかアレな経歴を持つが、最後は自分からガス室のドアを開けてしまい、死亡する。
どこかの研究室。
何に使うかもわからない機器、何語で書かれているかもわからない書籍が綺麗に整頓されている。
手術台の様な卓に寝かされている前島、目を覚ます。
前島「う……くっ……こ、ここは?」
博士「おやおや、お早いお目覚めだね。……ふむ、テキトーにつくった睡眠薬の調合がちょいと甘かったな」
前島「す、睡眠薬? ……あれ、俺は会社に」
博士「そうだよ前島くん。キミは間違いなく出勤中だった。けれど今はボクのオペ室に来てもらっている」
前島「オペ……? ちょっと、俺は全然健康で、手術なんか」
博士「あらら、こんな状況で、キミは私を医者と思っているのかね」
前島「え?」
博士、ちょっと考える。
博士「じゃあそういう事にしておこう。パンパカパーン、はい、私は医者です。キミには重篤な疾患が見受けられましたつきましては」
前島「ふざけんな! 何がそういう事にしておこうだよ!」
まさぶろう「コロセヨ……」
前島「いやそこまではしないけどさ」
まさぶろう「コロセヨ……」
前島「こ、殺しはしないよ。ただあんたが俺を解放してくれれば……」
博士「前島くん、キミは誰と喋ってるんだね?」
前島「誰って?あんた決まってるだろ」
博士「ぷっふぅーっ、ハズレー。正解はこちら、まさぶろうクンと喋っているのでしたー」
ジャーンと出されたのはモルモットのまさぶろう。
まさぶろう「コ、コロセヨ……ハヤクコロセヨ……」
前島「うわああああ!! しゃしゃしゃ喋るモルモットだぁーっ!!」
博士「おおお偉く古典的な驚き方ありがとう。最近ではやたら現実を直視しない若者がいるから嬉しいよ」
まさぶろう「コロセヨ……ボクヲコロセヨ……サッサト……」
博士「まさぶろう。キミはさっき濃硫酸と濃塩酸のダブル入浴から生き返ったばかりじゃないか」
前島「なんだそのヴァイオレンスなスパは!」
博士「説明しよう」
前島「しなくていい」
博士「この子はまさぶろう」
前島「するんかい!」
博士「あれは7年前。ボクが脱サラして1年経ったある日のことだ。海辺を散歩してたら人魚がいてね」
前島「人魚!?」
博士「浜に打ち上げられて死にそうになっててね。助けてあげた訳だよ」
前島「ぜってーウソだ」
博士、人魚を演じる。
博士「『あぁ親切で白衣の似合うイケメン様。どうかお礼に私をお召し上がりください』」
前島「尻軽人魚か!」
博士「まぁ据え膳ですからお召し上がった訳だよねー」
前島「下ネタかよ!」
博士「三枚におろして」
前島「文字通り召しあがったのか!?」
博士「おろしてる最中『な、んで……』って言われたのが謎だったんだよね」
前島「それ人魚とコミュニケートできてねーから。人魚死ぬつもりなかったから」
博士「まぁおろし生姜と醤油で美味しく頂いた訳だけど、途中でお腹いっぱいになってしまってね。残りのお肉をその当時飼い始めたモルモットに食べさせたら、まぁこれが見事に不老不死になっちゃってー。なんという生命の不思議」
前島「人魚食ったんだよ! モルモットが! どこも不思議じゃない簡単明瞭!」
博士「ほんっとに何しても死なないのこれが。いやぁ当時は半狂乱になるくらい殺しまくったよーギロチン首絞めハンマー自動車毒ガス銃火器粉塵爆破」
前島「頭おかしいだろ……」
博士「今ではすっかり他殺願望に塗れた、愛すべき陰鬱モルモットになりましたとさー」
まさぶろう「コロセヨ……」
前島「それ多分あんたが植え付けたんだよ」
博士「と、いう訳だ。まさぶろうクンを殺すだけでは快楽にならなくなってしまった……」
前島「ま、まさか……」
博士「そのまさかだよ……」
前島「や、やめろ。お、俺が何したっていうんだよ! やめて! 殺さないで!」
博士「殺しはしないよー。ただ、まだまさぶろうクンにはまだ、食べさせてないものがあってね……」
前島「う、うわ……うわあああああああああああ!」
博士、突然前島に向かってクラッカーを放つ。
博士「じゃーん。前島くん、誕生日、おめでとーう」
前島「へ……へ?」
博士「テッテレーン。ドッキリ大成功。前島くん、キミは今日で26歳になった。しかし祝ってくれる彼女も同僚もいないという事、私は調べさせてもらっている。僭越ながらこのボクが、みんなに代わって、祝わせてもらおう。ハッピーバースデー、前島くん」
前島「あ……あの」
博士「あぁ、ボクの事は博士と呼びたまえ。白衣も似合っているだろう?」
前島「博士……こんな、見ず知らずの俺に……」
博士「去年も、一昨年も、仕事に追われ、誰も祝ってくれなかったんだろう?」
前島「!?」
博士「独り身の辛さ、ボクだって知っている。だからこそ、ボクはこうして、訴えているんだよ……人と人との繋がりを……」
前島「博士……」
まさぶろう「イ、イワワ、セロヨ……」
前島「まさぶろう……」
博士「どうやら、まさぶろうクンも、キミに懐いたみたいだ。さぁ、パーティーの準備は整っている。君にだって有給くらいはあるだろう。今夜は大いに飲み明かそうではないか。」
前島「な、なんか、そういう事なら、ちょっと、飲んじゃおっかな……」
博士「そうしたまえ」
前島「俺、嬉しいんです……すっごく。子どもの時から、両親が共働きで……妹とか弟もいたから、俺、しっかりしなきゃってなってて……だから、なんか、こういう事あんまなくって……」
博士「うんうん……さぁ、向こうがちょっとしたパーティー会場になっている。先にいきたまえ。ボクは、キミにプレゼントを持って行ってあげよう」
前島「博士、先に言ったら、ダメじゃないっすかー」
博士「おや? しまった、口が滑った。ハッハッハ」
前島「あはは……じゃあ、先に行って、待ってます!」
まさぶろう「ツイテ、イカセロヨ……」
前島「もちろん! お前もありがとうな! まさぶろう!」
研究室の自動ドアーをくぐるまさぶろうと前島。
博士「……」
博士、どこからか手帳を取り出し、内容を読み上げる。
博士「前島ソウタ26歳。父親は過労死、母親は入院生活。自身も出会い系サイトに引っ掛かったのとマルチ商法に失敗し、多額の借金を負う。兄弟は成人しているが兄とは不仲。ちなみに素人童貞……まぁ、経歴はちょっとアレだが、まさぶろうクンが食べる初めての食材だ。光栄に思ってもらいたいね――あ、しまった。あっちはガス室だった。パーティー会場は反対側だ――今度こそおやすみ。前島くん」
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