25分声劇台本【天下五剣】 第十五話
- 2018/10/13
- 02:59
天下五剣 第十五話「交錯! 潰えるもの、進むもの」
♂:3 カネヒラ、ムネチカ、ネタバ
♀:2 イズナ、シロガネ
不:5 クニツナ、ツネツグ、ミツヨ、ヨキ、タツキ
モブ:屍人(甲、乙)
クニツナ、ツネツグ、ミツヨは少年の為、性別不問とします。
その為、5:5や、6:4等で対応できる台本となっています。
屍人甲、乙は適宜、兼役でお願いします。
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あらすじ
時は幻想戦国時代。『闘身 』という力を扱う者がいた。
数々の死闘を乗り越え、クニツナ、ツネツグ、ミツヨ、ムネチカが集結!
隠密衆『古備前』のカネヒラ、イズナ、シロガネを加え、ついに京まで辿り着いた一行の眼前に立ちはだかったのは、この世のものとは思えない禍々しい塔であった……!
襲い掛かる屍人たち! 迎え撃つ歴戦の勇士!
果たして無間衆の真の目的とは――
京付近。
聳え立つ禍々しいまでの塔が都を侵食している。
轟音を上げ、その塔にカネヒラの風速翔光大拳とクニツナの風雲滅裂波が飛んで行く。
イズナ「筆頭の技と、クニツナ様の技――まもなく塔に当たります!」
カネヒラ「宣戦布告にふさわしい花火にしてやるぜ!」
しかし、塔の中腹辺りから人が現れる。
ネタバである。
ムネチカ「……あれは!?」
ネタバ「させぬわ!!術技 ! 圏魔障壁 !」
ネタバ、呪文で描かれた巨大な曼陀羅の様な魔法陣を形成し、彼らの技をかき消す。
ツネツグ「なっ!? ……奴は一体!?」
ミツヨ「彼奴 こそ、無間衆八逆鬼 七 の逆 !」
クニツナ「出やがったなクソ野郎!」
ネタバ「ご挨拶だな。私には謀大逆 のネタバという名がある――それに、この私の最高傑作を、そうそう傷つけられては困るのだよ。人の魂を贄 として造り上げた、この混鼎之塔 をな!!」
ミツヨ「この期に及んでまだ人の命を弄ぶか!」
ネタバ「弄ぶ? 違うな。これは私と言う神が成る為の礎として利用しているのだよ!」
クニツナ「礎……!?」
ネタバ「ふははははっ! 貴様らがこうしている間にも、この混鼎之塔 は贄 の魂を喰らっている」
ツネツグ「なんだと!?」
ネタバ「教えてやろう、なぜ無間衆が人を殺 めているのかを。それは、全てこの塔の為! この塔を造り上げ、私が神となった新しい世界を創り上げる為なのだ!」
ムネチカ「狂っている……!」
ネタバ「燕雀 況 んぞ、鴻鵠 の志を知らんや。貴様らの様な小鳥や鈍 らに、このネタバの考えなど到底理解できまい!」
カネヒラ「生憎、テメェの考えを理解しようとは思わねぇ……テメェの様な、卑劣な下郎の考えはな!」
ネタバ「ふはははは! その減らず口、すぐに利けなくしてやる! 行けぇい!屍人 ども!」
ネタバが声を上げると、クニツナたちのいた荒野のそこかしこから、死体が動き出す。
地中から現れる者もあった。
臨戦態勢をとるクニツナたち。
クニツナ「行くぜ行くぜ行くぜぇえええっ!!」
屍人甲「うおおおおおおっ!」
屍人乙「ぐああああああっ!」
カネヒラ「構わねえ! 突っ込むぞ!!」
同時刻。混鼎之塔の中。
ネタバの背後にヨキとタツキがいる。
ネタバ「さて……時間と体力は、屍人どもが削ってくれよう」
ヨキ「なぜ屍人 を造り出す? お前の『興里 』を使えば良いではないか」
ネタバ「フッ……私は“忙しい”のだよ。それより、お前たちも配置につけ。奴らをあまり私の塔に踏み入れさせてくれるな」
タツキ「言われんでも」
ヨキ「タツキ。慎め」
ネタバ「……まぁいい」
ネタバ、その場を立ち去る。
タツキ「ヨキ。このまま奴の思い通りにさせていいのか? フツ様の為とはいえ、この塔は奴の力の誇示の様なもの。フツ様も何を考えておられるのか……」
ヨキ「『興里』を使わないのではないとしたら――」
タツキ「……ヨキ?」
ヨキ「タツキ、まだだ。まだその時ではない。もしくは、我々は大きな勘違いをしているのかもしれない」
混鼎之塔の麓。
屍人たちと戦うクニツナたち。
各々の技が繰り出され、屍人たちは次々と蹴散らされていく。
カネヒラ「大包平 ! 風速翔光大拳 !」
ツネツグ「数珠丸演舞 ! 驟雨 の舞!」
ミツヨ「大典太 ! 唐竹 割り!!」
屍人甲「があああああああああっ!!」
イズナ「管狐 ! 乱れ飛び、五月雨千本 !」
シロガネ「ナウマク・サーマンダー・ボダナン・サン・サハ・ソワカ! 幻惑、白界 、銀吹雪 !」
クニツナ「驚天動地 ! 地爆鎚衝打 !」
屍人乙「ぎゃああああああああっ!」
次々とクニツナたちの技に薙ぎ倒されていく屍人たち。
ムネチカ「……三日月!」
特にこれといった技を持っていないムネチカ。
羨望を秘めながら彼らを見る。
じっと手を見る。
ムネチカ「……私も、技の名前とか――」
ツネツグ「ムネチカ様! 気を付けて!」
屍人甲「うあああああああっ!」
ムネチカ「むっ!? はあああっ!」
屍人甲「ぐっふうううっ!?」
突如として現れた屍人も超人的な体捌きで斬り伏せるムネチカ。
ツネツグ「ムネチカ様、どうされましたか?」
ムネチカ「――何でもない! 行くぞツネツグ!」
ツネツグ「はい!」
屍人を粗方片付けたクニツナたち。
塔までの道ができた格好となる。
カネヒラ「道ができた! このまま塔へ突っ走る!」
イズナ「しかし、また先程の壁の様なものが出てきたら!?」
クニツナ「ぶっ壊す!!」
イズナ「えぇ!?」
シロガネ「フッ。頼もしい限りではないか。のぅ筆頭」
カネヒラ「まぁな。雑魚が追っかけてきてる。もっと走れお前ら!」
ツネツグ「はい!」
ミツヨ「承知!」
混鼎之塔の中。
廊下を歩くヨキとタツキ。
ヨキ「タツキ」
タツキ「なんだ?」
ヨキ「お前に、先陣を頼みたい」
タツキ「構わんが、ヨキは?」
ヨキ「……ネタバに接触する」
タツキ「ヨキ……」
ヨキ「もしもの時は、私に構うな。フツ様を守り抜け。それが従者たる者の定めだ」
タツキ「……半身を捨てては置けない」
ヨキ「タツキ」
タツキ「……」
ヨキ「私たちは二人であり、一人だ。案ずるな」
タツキ「ヨキ……」
ヨキ「お前の中に、私はいないか?」
タツキ「……いる……いるよ」
ヨキ「そうだろう? ……行け。奴らは近いぞ」
タツキ「うん……」
タツキ、走る。
ヨキ、タツキの後ろ姿を見つめながら呟く。
ヨキ「さらばだ……私の半身……私のかわいいタツキ」
混鼎之塔、門前。
ムネチカ「門が近くなってきたぞ!」
クニツナ「閉じられてんな! ぶっ壊す!!」
ツネツグ「それしか口が利けないのか?」
クニツナ「じゃあ、門番が開けてくれると思うか?」
ツネツグ「……いや、無いね! 数珠丸!」
ミツヨ「大典太!」
クニツナ「鬼丸! 国綱!」
カネヒラ「花火が駄目なら鐘撞 きだ! 派手に鳴らせよ!?」
クニツナ「砕けろおおおおおおおおっっ!!」
ツネツグ「はあああああああっ!!」
ミツヨ「うおおおおおおおおっ!!」
ムネチカ「うおおっ!?」
イズナ「うわああっ!?」
カネヒラ「ヘッ――門はぶっ壊れた! 進め!」
イズナ「こ、これが、三人の力……!?」
シロガネ「一人一人の時よりも力の高まりを感じる……誠、闘身とは底知れぬ力よ」
ムネチカ「!? 気を付けろ! 誰かいる!」
塔の中、一階。
がらんとした造りになっており、奥には上階へ進むであろう階段が見える。
その真ん中に一人、タツキが立っていた。
タツキ「よくここまで来たと褒めてやろう」
クニツナ「お前は!?」
タツキ「我が名はタツキ。フツ様に仕えし鬼」
ツネツグ「鬼、だと……」
タツキ「我らは主 の手斧 なり……いざ!」
ムネチカ「来るぞ!」
ツネツグ「数珠丸演舞!時雨 の舞!」
クニツナたちに向かって突進してくるタツキ。
ツネツグ、数珠丸で応戦する。
鳥のさえずりの様に、剣が重なる音が響く。
タツキ「はっ!」
ツネツグ「くっ! たぁ!」
タツキ「ふっ……! やあっ!」
ツネツグ「!? なんという、身のこなし!」
ムネチカ「まずい……助太刀する!」
タツキ「いいだろう!」
ムネチカ、抜刀して加勢する。
が、タツキの勢いは衰えない。
ツネツグ「見くびられたものだ!」
タツキ「ははは! どうしたどうした! 二人してこの程度か!」
ムネチカ「速い! この、太刀筋! 只者ではない!」
クニツナ「ツネツグとムネチカ相手に、全然引けを取ってねぇ!?」
タツキ「遊びは、終わりだ!」
タツキ、ツネツグの腹部を蹴り飛ばす。
ツネツグ「ぐふっ!?」
ムネチカ「ツネツグ!?」
タツキ「自分の心配をしたら、どうだ!?」
クニツナ「ムネチカ! 危ねぇ!」
ムネチカ「しまった!?」
タツキ、ムネチカに斬りかかる。
ムネチカ、ツネツグに気を取られて反応が遅れる。
タツキ「もらった!」
ミツヨ「大典太ぁあ!!」
ミツヨ、大典太を繰り出し、タツキの攻撃を受け止める。
ツネツグ「……ミ、ミツヨ」
ミツヨ「大丈夫ですか? ツネツグ殿」
ムネチカ「ミツヨ……!」
タツキ「ほぅ……よくぞ受けた」
ミツヨ「我が闘身、大典太は守る闘身と見つけたり」
タツキ「守るだけで、何ができる!」
イズナ「管狐!」
タツキ「むっ!?」
イズナ、管狐を喚び千本を飛ばす。
バク転の要領で躱すタツキ。
イズナ「思い通りには、いたしません!」
タツキ「ふっ……いいだろう。四人まとめて相手をしてやる」
ミツヨ「いえ、ここは私と」
イズナ「このイズナがお相手いたします!」
ツネツグ「え!?」
シロガネ「イズナ!」
イズナ「敵一人に、七人が手間取ってはなりませぬ。早く、ネタバを倒して無間衆の行いを止めて下さい!」
シロガネ「しかし――」
カネヒラ「わかった」
シロガネ「筆頭! イズナは――」
カネヒラ「イズナ!」
イズナ「はい!」
カネヒラ「……死ぬんじゃねぇぞ」
イズナ「……かしこまりました」
カネヒラ「……走れ!」
クニツナ「ミツヨ!?」
ミツヨ「クニツナ殿、ツネツグ殿……某も、師匠の弟子の端くれ。むざむざ死ぬ様な某ではありませぬ。ご安心くださいませ」
ツネツグ「……絶対に、追いついて来るんだぞ!?」
ミツヨ「約束です!」
ムネチカ「……信じているぞ」
ミツヨ「はい!」
タツキ「!? 待て!」
イズナ「あなたの相手は我々です!」
タツキ「チッ……瞬時に私の型を見抜き、手数で攻める様な戦法の者を先に行かせたな」
ミツヨ「どうでしょうか?匹夫 の勇 かも知れませぬ」
イズナ「それかお人好しか、です!」
タツキ「度 し難 いな……その闘身、その妖 に、直接訊くとしよう!」
ミツヨ「大典太! 受け止めろ! イズナ殿!」
イズナ「はい! 管狐! 宙返り、苦無落とし!」
タツキ「甘いっ!」
タツキ、イズナの攻撃を受け止める。
その隙に大典太、構える。
ミツヨ「大典太!」
タツキ「なにっ!?」
ミツヨ「一点突破! 正剣突きィ!」
タツキ「ぐっ!!??」
ミツヨ「防がれたか!」
イズナ「今! 管狐!」
タツキ「くっ!? ……おのれ炸裂弾か!?」
管狐の攻撃を避けたタツキ。
イズナが投げたであろう炸裂弾が目の前で爆ぜる。
ミツヨ「うあっ!? そ、そんなものまで仕込んでいるとは」
イズナ「私の管狐は、何でも持ってますよ?」
ミツヨ「……! イズナ殿! 危ない!」
イズナ「!」
タツキ「カァッ!!」
イズナ「ぐはっ!!??(なぜ!? 直撃したはず……!)」
タツキ「鬼ヲ……舐メルナ!!」
イズナ「回復……して……?」
ミツヨ「イズナ殿!!」
タツキ「解力 ……壱式 !」
混鼎之塔、上階へと続く道。
心なしか皆の走るペースが落ちている。
カネヒラ「……」
シロガネ「筆頭……イズナは」
カネヒラ「うるせぇ! イズナは、今まで決して俺の言うことに背いたり、嘘をついたりしなかった……下忍の中の下忍だ。俺はイズナを信じる」
シロガネ「……」
ツネツグ「シロガネ……イズナは、何を隠しているんだ?」
シロガネ「……イズナには、決して使ってはならない“能力”がある」
ツネツグ「決して使ってはならない……」
シロガネ「もし、使おうものなら……イズナは死ぬ」
混鼎之塔、中腹。
ネタバの前に、ヨキが立っている。
ネタバ「……そこで何をしている、ヨキ」
ヨキ「知れたこと。お前の真意を問い質しに来た」
ネタバ「真意だと?」
ヨキ「ネタバよ……貴様のこの塔……前はフツ様に捧げる塔と言ったな」
ネタバ「そうだったな」
ヨキ「だが先刻、お前は『私という神が成る為』と言った……何故だ?」
ネタバ「……言葉の通りだよ」
ヨキ「フツ様を裏切るつもりか!?」
ネタバ「裏切りなど、とんでもない。さすれば私は今既にフツ様に斬られていよう」
ヨキ「その姿が本物なら、な」
ネタバ「なんだと?」
ヨキ「……ネタバよ。貴様の正体を、明かしてもらうぞ!」
ヨキ、短刀を抜く。
ネタバ、怯み始める。
ネタバ「私の『興里』の力を知っての愚行か!?」
ヨキ「出せるものなら出してみろ」
ネタバ「!?」
ヨキ「図星の様だな……お前は今までの行軍で『興里』が出せないまでに消耗している!」
ネタバ「クッ!!??」
ヨキ「妖術如きで私を倒せると思うな! これまでだ! ネタバよ!!」
ネタバ「……」
ネタバ、全てを悟ったのか、うなだれる。
好機と見たヨキ、ネタバに斬りかかる。
ヨキ「もらった!!」
ネタバ「……『長曾禰 』」
突如として抜かれたネタバのもう一つの闘身『長曾禰』。
高速の拳がヨキの腹を貫く。
ヨキ「ぐほっ!!?? お……あ……」
ネタバ「貴様如きにこの『闘身』を使いたくはなかったが、致し方ない」
文字通り風穴が空いたヨキ、膝をつく。
その様を蔑んだ目で見下ろすネタバ。
ヨキ「な……と、闘身は……」
ネタバ「そう。闘身は一人に対して一体……それが闘身を持つ者の道理になっている……そして私は貴様の言う通り、今は『興里』を使えない……だが! それらの道理はこのネタバには通じんのだよ!!」
ヨキ「……くは……」
ネタバ「ふはははは! 私は神となる者! 闘身を二体扱うことなど、造作もないのだ!! この『長曾禰 』と『興里 』! そして私の知略と妖術! 四つの柱を持ち、磐石たる私の行く手を阻む者は誰も居らぬ。誰もな!? ふはははは! はっはっはっはっはっ!!」
ヨキ「タツ、キ……」
ネタバ「さて……しかしながら、このまま捨て石にするのは偲びない。捨て石なら捨て石らしく、私のせめてもの駒となるがいい……」
ヨキ「生き……ろ」
ネタバ「術技……呪肉怪成 !!」
混鼎之塔、一階。
タツキに圧倒されていくミツヨとイズナ。
ミツヨ「ぐああああああっ!!」
タツキ「アアアアアアアアアッ!!」
イズナ「つ、強い……身のこなしに加え、一撃が更に強力になって……」
ミツヨ「受け止め、きれない……!」
タツキ「言ッタダロウ、我ハ鬼デアルト。鬼ト人デハ最早、太刀打チデキンノダ!!」
ミツヨ「来る!」
イズナ「管狐! 五月雨千本!」
タツキ「ヌアアアアアアアアッ!」
イズナ「薙ぎ払われた!?」
ミツヨ「大典太! 唐竹割り!!」
タツキ「オオオオオアアアアアアッ!!」
ミツヨ「ぐあっ!? お、大典太の、剣が、折れた……!?」
タツキ「解力 、弐式 !」
タツキ、更に力を解放する。
目視でもしっかりと感じ取れるまでに気の波動がタツキの周囲に現れる。
ミツヨ「しまっ――」
イズナ「ミツヨ様!!??」
タツキ「ヌンンンッ!!」
タツキの貫手が、ミツヨの胸を貫く。
ミツヨ「ぐ……は……あ……」
イズナ「……ミツヨ様……ミツヨ様!!」
ミツヨ「イズ、ナ……イ……」
イズナ「ミツヨ様! しっかり! ミツヨ様!」
ミツヨ「……」
ミツヨ、息絶える。
イズナ、何かを決心した様な、研ぎ澄まされた光を瞳に宿す。
イズナ「ミツヨ様……」
タツキ「次ハ……オ前ダ……」
イズナに歩み寄るタツキ。
イズナ「ナウマク・サーマンダー・ボダナン」
タツキ「!?」
イズナ「キリカク・ソワカ」
タツキ「コ、コレハ!?」
イズナ「普 く諸仏 に帰命 し奉 る……荼枳尼天 よ、成就あれ」
突如、柔らかな光がイズナを中心にして球状に放たれる。
身構えるタツキ。
タツキ「貴様……何者ダ!?」
イズナ「私は、くだもち。ただの狐憑きにございます……ですが、荼枳尼天 の加護受けし、正真正銘の狐憑きにございます」
タツキ「荼枳尼天 ……ダト!?」
イズナ「荼枳尼 の力を以て、我が命と引き換えに、この者に福徳を授け、我が命を託します……オン・キリカク・ソワカ!」
タツキ「くっ!?」
光の輝度が増す。
タツキ、眩みそうになり、目を伏せる。
イズナ、独白。
イズナ「ミツヨ様……実は私、こうなる事を知っていました。私には、死が近い者が解るのです……貴方もその一人でした。でも、何故ですかね……私は、それでも貴方を守りたいって、思ったんです……ご両親を殺されて尚、皆の為に闘うことを決めた貴方の強さを知った時、確信したんです……この人こそ、私が守らなきゃいけない人だ、って……愛とか、恋とか、そこは、よくわからないですけど……でも、子を持つ親の気持ち、母親の気持ちは、何となく、解った様な気がします……ミツヨ様……目を開けて下さいませ……」
光が徐々に消えていく。
目を覚ますミツヨ、起き上がる。
そこには、衰弱しきったイズナが横たわっていた。
ミツヨ「……イズナ……?」
イズナ「ミツヨ、様……」
ミツヨ「イズナ!?」
ミツヨ、イズナに駆け寄り抱き起す。
イズナ「良かった……術は、ちゃんと使えた様ですね……」
ミツヨ「何が、どうして……? こんなに、痩せ細って……イズナ! 目を開けて!」
イズナ「えへへ……ミツヨ様……イズナは、ミツヨ様の、お役に立てて……幸せ……」
ミツヨ「もう喋らないで! ……しっかり! イズナ!」
イズナ「お慕い、申しております……ミツ、ヨ……さ――」
ミツヨ「イズナ! イズナまで、イズナまで喪 ったら、某 は……某は……!! イズナアアアアアアアアアッ!!!」
イズナ「……」
静寂が辺りを包む。
後ろからゆっくりとタツキが歩み寄る。
ミツヨ「……」
タツキ「……立テ」
ミツヨ「……」
タツキ「マダ、決着ガツイテイナイ」
ミツヨ「……まだ、何が起きたのか、定かではないが……少なくとも、私がイズナを見殺しにしたも同然ならば、貴様もイズナを殺したのと同じだ!」
タツキ「ココハ戦場ダ。来イ」
ミツヨ「貴様だけは、絶対に許さんっっ!!」
タツキ「カアアアッ!!」
ミツヨ「大典太ああああああああああっ!!」
大典太、咆哮を上げる。
すると節々にある歯車が回り始め、変形を始めた。
各部が小気味よい音を立て、遂には巨大な手と成った。
タツキ「!? 姿ガ!? 変ワッタ!?」
ミツヨ「うおおおおおおおおおおあああああああああああっ!!」
ミツヨ、巨大な手と成った大典太を右手に装着し、タツキに突進する。
タツキ「コケオドシガアアアアアッ!!」
ミツヨ「ぬうううう!! うあああああああっっ!!」
大典太の拳が、タツキにぶち当たる。
タツキ、受け止めきれず巨拳に激突する。
タツキ「グウウウウオオオオオオオオオオウウウウ!!??」
ミツヨ「大典太!闘身拳 ! 正拳衝きいいいいいいいいっ!!」
ミツヨ、一瞬拳を引き、更に拳を振り抜く。
拳と成った大典太のみが鉄砲玉の様に飛び、タツキを吹き飛ばす。
タツキ「グアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」
ミツヨ「……闘身拳 、仕舞 の儀 」
突如、拳が開き、タツキに襲い掛かる。
タツキ「ナ、ナンダ!?」
ミツヨ「天神長持 」
巨拳がタツキを握り潰そうとする。
タツキ、間一髪体勢を整えて巨拳を押さえる。
タツキ「オアアグッ!!?? ツ、ブ、サレテェェェ! タマルカァアア!!」
ミツヨ「いいや。貴様はこのミツヨの大典太を以て、奈落の奥底へと仕舞わせてもらう……握り潰してなぁ!!」
尚も力が増していく巨拳。
タツキ、最後の力を振り絞る。
が、傷口が癒えるよりも先に出血が増していく。
タツキ「解力 ィイイイイッ! 参式 ィィィイイイイッ!!」
ミツヨ「大典太ぁぁぁぁぁあああああっっっ!!」
ミツヨの力が圧倒したか、タツキの力が衰えたか。
徐々に手の平が閉じていく。
タツキ「ヌウウウウウウウ!? ウウウウウウウウ!!??」
ミツヨ「イズナアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」
決着。
タツキ「ギ、イ!? ア、ガ、ア、アアアアアアアアアアアア!!!??? ヨギ!? ヨギイイイイイイイイイ!!」
砕ける骨の音。
飛沫を上げる鮮血はミツヨにも降りかかる。
滴る血肉。
ミツヨ「……」
酷く、沈んだ顔をしていた。
黒よりも青く、青よりも暗い水たまりの様な。
何の気なく口許の血を拭うミツヨ。
ミツヨ「血だ……これは……誰の血だ……? 否……最早、些末なこと……」
大典太の身体から、ほのかに湯気が立ち込めている。
音もなく自身にこびりついた血肉を吸い取っているようであった。
大典太は鬼を喰らっていた。
ミツヨ「……鬼の肉は美味いか? 大典太」
大典太が、ゆっくりとその巨大な手となった身体を開く。
歯車が小気味よい音を立て、節々の部品が可動し、元の人型へと変形していく。
が、その色赤く澱み、往時の大典太とは形相を新たかにしていた。
ミツヨ「なんだか……とても、晴れ晴れとしているんだ……行こう、大典太……お前にもその赤が、似合っているぞ……フフフフフ……ハハハハハハハ……赤く……赤く、赤く染めよう……全てを、全てを……」
ふらふらと歩いていくミツヨ。
塔を登っていく。
第十六話へと続く。
お疲れ様でした。
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生放送等で使用される場合、
台本名を記入して頂けますと嬉しいです。
後日覗きに参ります。
♂:3 カネヒラ、ムネチカ、ネタバ
♀:2 イズナ、シロガネ
不:5 クニツナ、ツネツグ、ミツヨ、ヨキ、タツキ
モブ:屍人(甲、乙)
クニツナ、ツネツグ、ミツヨは少年の為、性別不問とします。
その為、5:5や、6:4等で対応できる台本となっています。
屍人甲、乙は適宜、兼役でお願いします。
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あらすじ
時は幻想戦国時代。『
数々の死闘を乗り越え、クニツナ、ツネツグ、ミツヨ、ムネチカが集結!
隠密衆『古備前』のカネヒラ、イズナ、シロガネを加え、ついに京まで辿り着いた一行の眼前に立ちはだかったのは、この世のものとは思えない禍々しい塔であった……!
襲い掛かる屍人たち! 迎え撃つ歴戦の勇士!
果たして無間衆の真の目的とは――
京付近。
聳え立つ禍々しいまでの塔が都を侵食している。
轟音を上げ、その塔にカネヒラの風速翔光大拳とクニツナの風雲滅裂波が飛んで行く。
イズナ「筆頭の技と、クニツナ様の技――まもなく塔に当たります!」
カネヒラ「宣戦布告にふさわしい花火にしてやるぜ!」
しかし、塔の中腹辺りから人が現れる。
ネタバである。
ムネチカ「……あれは!?」
ネタバ「させぬわ!!
ネタバ、呪文で描かれた巨大な曼陀羅の様な魔法陣を形成し、彼らの技をかき消す。
ツネツグ「なっ!? ……奴は一体!?」
ミツヨ「
クニツナ「出やがったなクソ野郎!」
ネタバ「ご挨拶だな。私には
ミツヨ「この期に及んでまだ人の命を弄ぶか!」
ネタバ「弄ぶ? 違うな。これは私と言う神が成る為の礎として利用しているのだよ!」
クニツナ「礎……!?」
ネタバ「ふははははっ! 貴様らがこうしている間にも、この
ツネツグ「なんだと!?」
ネタバ「教えてやろう、なぜ無間衆が人を
ムネチカ「狂っている……!」
ネタバ「
カネヒラ「生憎、テメェの考えを理解しようとは思わねぇ……テメェの様な、卑劣な下郎の考えはな!」
ネタバ「ふはははは! その減らず口、すぐに利けなくしてやる! 行けぇい!
ネタバが声を上げると、クニツナたちのいた荒野のそこかしこから、死体が動き出す。
地中から現れる者もあった。
臨戦態勢をとるクニツナたち。
クニツナ「行くぜ行くぜ行くぜぇえええっ!!」
屍人甲「うおおおおおおっ!」
屍人乙「ぐああああああっ!」
カネヒラ「構わねえ! 突っ込むぞ!!」
同時刻。混鼎之塔の中。
ネタバの背後にヨキとタツキがいる。
ネタバ「さて……時間と体力は、屍人どもが削ってくれよう」
ヨキ「なぜ
ネタバ「フッ……私は“忙しい”のだよ。それより、お前たちも配置につけ。奴らをあまり私の塔に踏み入れさせてくれるな」
タツキ「言われんでも」
ヨキ「タツキ。慎め」
ネタバ「……まぁいい」
ネタバ、その場を立ち去る。
タツキ「ヨキ。このまま奴の思い通りにさせていいのか? フツ様の為とはいえ、この塔は奴の力の誇示の様なもの。フツ様も何を考えておられるのか……」
ヨキ「『興里』を使わないのではないとしたら――」
タツキ「……ヨキ?」
ヨキ「タツキ、まだだ。まだその時ではない。もしくは、我々は大きな勘違いをしているのかもしれない」
混鼎之塔の麓。
屍人たちと戦うクニツナたち。
各々の技が繰り出され、屍人たちは次々と蹴散らされていく。
カネヒラ「
ツネツグ「
ミツヨ「
屍人甲「があああああああああっ!!」
イズナ「
シロガネ「ナウマク・サーマンダー・ボダナン・サン・サハ・ソワカ! 幻惑、
クニツナ「
屍人乙「ぎゃああああああああっ!」
次々とクニツナたちの技に薙ぎ倒されていく屍人たち。
ムネチカ「……三日月!」
特にこれといった技を持っていないムネチカ。
羨望を秘めながら彼らを見る。
じっと手を見る。
ムネチカ「……私も、技の名前とか――」
ツネツグ「ムネチカ様! 気を付けて!」
屍人甲「うあああああああっ!」
ムネチカ「むっ!? はあああっ!」
屍人甲「ぐっふうううっ!?」
突如として現れた屍人も超人的な体捌きで斬り伏せるムネチカ。
ツネツグ「ムネチカ様、どうされましたか?」
ムネチカ「――何でもない! 行くぞツネツグ!」
ツネツグ「はい!」
屍人を粗方片付けたクニツナたち。
塔までの道ができた格好となる。
カネヒラ「道ができた! このまま塔へ突っ走る!」
イズナ「しかし、また先程の壁の様なものが出てきたら!?」
クニツナ「ぶっ壊す!!」
イズナ「えぇ!?」
シロガネ「フッ。頼もしい限りではないか。のぅ筆頭」
カネヒラ「まぁな。雑魚が追っかけてきてる。もっと走れお前ら!」
ツネツグ「はい!」
ミツヨ「承知!」
混鼎之塔の中。
廊下を歩くヨキとタツキ。
ヨキ「タツキ」
タツキ「なんだ?」
ヨキ「お前に、先陣を頼みたい」
タツキ「構わんが、ヨキは?」
ヨキ「……ネタバに接触する」
タツキ「ヨキ……」
ヨキ「もしもの時は、私に構うな。フツ様を守り抜け。それが従者たる者の定めだ」
タツキ「……半身を捨てては置けない」
ヨキ「タツキ」
タツキ「……」
ヨキ「私たちは二人であり、一人だ。案ずるな」
タツキ「ヨキ……」
ヨキ「お前の中に、私はいないか?」
タツキ「……いる……いるよ」
ヨキ「そうだろう? ……行け。奴らは近いぞ」
タツキ「うん……」
タツキ、走る。
ヨキ、タツキの後ろ姿を見つめながら呟く。
ヨキ「さらばだ……私の半身……私のかわいいタツキ」
混鼎之塔、門前。
ムネチカ「門が近くなってきたぞ!」
クニツナ「閉じられてんな! ぶっ壊す!!」
ツネツグ「それしか口が利けないのか?」
クニツナ「じゃあ、門番が開けてくれると思うか?」
ツネツグ「……いや、無いね! 数珠丸!」
ミツヨ「大典太!」
クニツナ「鬼丸! 国綱!」
カネヒラ「花火が駄目なら鐘
クニツナ「砕けろおおおおおおおおっっ!!」
ツネツグ「はあああああああっ!!」
ミツヨ「うおおおおおおおおっ!!」
ムネチカ「うおおっ!?」
イズナ「うわああっ!?」
カネヒラ「ヘッ――門はぶっ壊れた! 進め!」
イズナ「こ、これが、三人の力……!?」
シロガネ「一人一人の時よりも力の高まりを感じる……誠、闘身とは底知れぬ力よ」
ムネチカ「!? 気を付けろ! 誰かいる!」
塔の中、一階。
がらんとした造りになっており、奥には上階へ進むであろう階段が見える。
その真ん中に一人、タツキが立っていた。
タツキ「よくここまで来たと褒めてやろう」
クニツナ「お前は!?」
タツキ「我が名はタツキ。フツ様に仕えし鬼」
ツネツグ「鬼、だと……」
タツキ「我らは
ムネチカ「来るぞ!」
ツネツグ「数珠丸演舞!
クニツナたちに向かって突進してくるタツキ。
ツネツグ、数珠丸で応戦する。
鳥のさえずりの様に、剣が重なる音が響く。
タツキ「はっ!」
ツネツグ「くっ! たぁ!」
タツキ「ふっ……! やあっ!」
ツネツグ「!? なんという、身のこなし!」
ムネチカ「まずい……助太刀する!」
タツキ「いいだろう!」
ムネチカ、抜刀して加勢する。
が、タツキの勢いは衰えない。
ツネツグ「見くびられたものだ!」
タツキ「ははは! どうしたどうした! 二人してこの程度か!」
ムネチカ「速い! この、太刀筋! 只者ではない!」
クニツナ「ツネツグとムネチカ相手に、全然引けを取ってねぇ!?」
タツキ「遊びは、終わりだ!」
タツキ、ツネツグの腹部を蹴り飛ばす。
ツネツグ「ぐふっ!?」
ムネチカ「ツネツグ!?」
タツキ「自分の心配をしたら、どうだ!?」
クニツナ「ムネチカ! 危ねぇ!」
ムネチカ「しまった!?」
タツキ、ムネチカに斬りかかる。
ムネチカ、ツネツグに気を取られて反応が遅れる。
タツキ「もらった!」
ミツヨ「大典太ぁあ!!」
ミツヨ、大典太を繰り出し、タツキの攻撃を受け止める。
ツネツグ「……ミ、ミツヨ」
ミツヨ「大丈夫ですか? ツネツグ殿」
ムネチカ「ミツヨ……!」
タツキ「ほぅ……よくぞ受けた」
ミツヨ「我が闘身、大典太は守る闘身と見つけたり」
タツキ「守るだけで、何ができる!」
イズナ「管狐!」
タツキ「むっ!?」
イズナ、管狐を喚び千本を飛ばす。
バク転の要領で躱すタツキ。
イズナ「思い通りには、いたしません!」
タツキ「ふっ……いいだろう。四人まとめて相手をしてやる」
ミツヨ「いえ、ここは私と」
イズナ「このイズナがお相手いたします!」
ツネツグ「え!?」
シロガネ「イズナ!」
イズナ「敵一人に、七人が手間取ってはなりませぬ。早く、ネタバを倒して無間衆の行いを止めて下さい!」
シロガネ「しかし――」
カネヒラ「わかった」
シロガネ「筆頭! イズナは――」
カネヒラ「イズナ!」
イズナ「はい!」
カネヒラ「……死ぬんじゃねぇぞ」
イズナ「……かしこまりました」
カネヒラ「……走れ!」
クニツナ「ミツヨ!?」
ミツヨ「クニツナ殿、ツネツグ殿……某も、師匠の弟子の端くれ。むざむざ死ぬ様な某ではありませぬ。ご安心くださいませ」
ツネツグ「……絶対に、追いついて来るんだぞ!?」
ミツヨ「約束です!」
ムネチカ「……信じているぞ」
ミツヨ「はい!」
タツキ「!? 待て!」
イズナ「あなたの相手は我々です!」
タツキ「チッ……瞬時に私の型を見抜き、手数で攻める様な戦法の者を先に行かせたな」
ミツヨ「どうでしょうか?
イズナ「それかお人好しか、です!」
タツキ「
ミツヨ「大典太! 受け止めろ! イズナ殿!」
イズナ「はい! 管狐! 宙返り、苦無落とし!」
タツキ「甘いっ!」
タツキ、イズナの攻撃を受け止める。
その隙に大典太、構える。
ミツヨ「大典太!」
タツキ「なにっ!?」
ミツヨ「一点突破! 正剣突きィ!」
タツキ「ぐっ!!??」
ミツヨ「防がれたか!」
イズナ「今! 管狐!」
タツキ「くっ!? ……おのれ炸裂弾か!?」
管狐の攻撃を避けたタツキ。
イズナが投げたであろう炸裂弾が目の前で爆ぜる。
ミツヨ「うあっ!? そ、そんなものまで仕込んでいるとは」
イズナ「私の管狐は、何でも持ってますよ?」
ミツヨ「……! イズナ殿! 危ない!」
イズナ「!」
タツキ「カァッ!!」
イズナ「ぐはっ!!??(なぜ!? 直撃したはず……!)」
タツキ「鬼ヲ……舐メルナ!!」
イズナ「回復……して……?」
ミツヨ「イズナ殿!!」
タツキ「
混鼎之塔、上階へと続く道。
心なしか皆の走るペースが落ちている。
カネヒラ「……」
シロガネ「筆頭……イズナは」
カネヒラ「うるせぇ! イズナは、今まで決して俺の言うことに背いたり、嘘をついたりしなかった……下忍の中の下忍だ。俺はイズナを信じる」
シロガネ「……」
ツネツグ「シロガネ……イズナは、何を隠しているんだ?」
シロガネ「……イズナには、決して使ってはならない“能力”がある」
ツネツグ「決して使ってはならない……」
シロガネ「もし、使おうものなら……イズナは死ぬ」
混鼎之塔、中腹。
ネタバの前に、ヨキが立っている。
ネタバ「……そこで何をしている、ヨキ」
ヨキ「知れたこと。お前の真意を問い質しに来た」
ネタバ「真意だと?」
ヨキ「ネタバよ……貴様のこの塔……前はフツ様に捧げる塔と言ったな」
ネタバ「そうだったな」
ヨキ「だが先刻、お前は『私という神が成る為』と言った……何故だ?」
ネタバ「……言葉の通りだよ」
ヨキ「フツ様を裏切るつもりか!?」
ネタバ「裏切りなど、とんでもない。さすれば私は今既にフツ様に斬られていよう」
ヨキ「その姿が本物なら、な」
ネタバ「なんだと?」
ヨキ「……ネタバよ。貴様の正体を、明かしてもらうぞ!」
ヨキ、短刀を抜く。
ネタバ、怯み始める。
ネタバ「私の『興里』の力を知っての愚行か!?」
ヨキ「出せるものなら出してみろ」
ネタバ「!?」
ヨキ「図星の様だな……お前は今までの行軍で『興里』が出せないまでに消耗している!」
ネタバ「クッ!!??」
ヨキ「妖術如きで私を倒せると思うな! これまでだ! ネタバよ!!」
ネタバ「……」
ネタバ、全てを悟ったのか、うなだれる。
好機と見たヨキ、ネタバに斬りかかる。
ヨキ「もらった!!」
ネタバ「……『
突如として抜かれたネタバのもう一つの闘身『長曾禰』。
高速の拳がヨキの腹を貫く。
ヨキ「ぐほっ!!?? お……あ……」
ネタバ「貴様如きにこの『闘身』を使いたくはなかったが、致し方ない」
文字通り風穴が空いたヨキ、膝をつく。
その様を蔑んだ目で見下ろすネタバ。
ヨキ「な……と、闘身は……」
ネタバ「そう。闘身は一人に対して一体……それが闘身を持つ者の道理になっている……そして私は貴様の言う通り、今は『興里』を使えない……だが! それらの道理はこのネタバには通じんのだよ!!」
ヨキ「……くは……」
ネタバ「ふはははは! 私は神となる者! 闘身を二体扱うことなど、造作もないのだ!! この『
ヨキ「タツ、キ……」
ネタバ「さて……しかしながら、このまま捨て石にするのは偲びない。捨て石なら捨て石らしく、私のせめてもの駒となるがいい……」
ヨキ「生き……ろ」
ネタバ「術技……
混鼎之塔、一階。
タツキに圧倒されていくミツヨとイズナ。
ミツヨ「ぐああああああっ!!」
タツキ「アアアアアアアアアッ!!」
イズナ「つ、強い……身のこなしに加え、一撃が更に強力になって……」
ミツヨ「受け止め、きれない……!」
タツキ「言ッタダロウ、我ハ鬼デアルト。鬼ト人デハ最早、太刀打チデキンノダ!!」
ミツヨ「来る!」
イズナ「管狐! 五月雨千本!」
タツキ「ヌアアアアアアアアッ!」
イズナ「薙ぎ払われた!?」
ミツヨ「大典太! 唐竹割り!!」
タツキ「オオオオオアアアアアアッ!!」
ミツヨ「ぐあっ!? お、大典太の、剣が、折れた……!?」
タツキ「
タツキ、更に力を解放する。
目視でもしっかりと感じ取れるまでに気の波動がタツキの周囲に現れる。
ミツヨ「しまっ――」
イズナ「ミツヨ様!!??」
タツキ「ヌンンンッ!!」
タツキの貫手が、ミツヨの胸を貫く。
ミツヨ「ぐ……は……あ……」
イズナ「……ミツヨ様……ミツヨ様!!」
ミツヨ「イズ、ナ……イ……」
イズナ「ミツヨ様! しっかり! ミツヨ様!」
ミツヨ「……」
ミツヨ、息絶える。
イズナ、何かを決心した様な、研ぎ澄まされた光を瞳に宿す。
イズナ「ミツヨ様……」
タツキ「次ハ……オ前ダ……」
イズナに歩み寄るタツキ。
イズナ「ナウマク・サーマンダー・ボダナン」
タツキ「!?」
イズナ「キリカク・ソワカ」
タツキ「コ、コレハ!?」
イズナ「
突如、柔らかな光がイズナを中心にして球状に放たれる。
身構えるタツキ。
タツキ「貴様……何者ダ!?」
イズナ「私は、くだもち。ただの狐憑きにございます……ですが、
タツキ「
イズナ「
タツキ「くっ!?」
光の輝度が増す。
タツキ、眩みそうになり、目を伏せる。
イズナ、独白。
イズナ「ミツヨ様……実は私、こうなる事を知っていました。私には、死が近い者が解るのです……貴方もその一人でした。でも、何故ですかね……私は、それでも貴方を守りたいって、思ったんです……ご両親を殺されて尚、皆の為に闘うことを決めた貴方の強さを知った時、確信したんです……この人こそ、私が守らなきゃいけない人だ、って……愛とか、恋とか、そこは、よくわからないですけど……でも、子を持つ親の気持ち、母親の気持ちは、何となく、解った様な気がします……ミツヨ様……目を開けて下さいませ……」
光が徐々に消えていく。
目を覚ますミツヨ、起き上がる。
そこには、衰弱しきったイズナが横たわっていた。
ミツヨ「……イズナ……?」
イズナ「ミツヨ、様……」
ミツヨ「イズナ!?」
ミツヨ、イズナに駆け寄り抱き起す。
イズナ「良かった……術は、ちゃんと使えた様ですね……」
ミツヨ「何が、どうして……? こんなに、痩せ細って……イズナ! 目を開けて!」
イズナ「えへへ……ミツヨ様……イズナは、ミツヨ様の、お役に立てて……幸せ……」
ミツヨ「もう喋らないで! ……しっかり! イズナ!」
イズナ「お慕い、申しております……ミツ、ヨ……さ――」
ミツヨ「イズナ! イズナまで、イズナまで
イズナ「……」
静寂が辺りを包む。
後ろからゆっくりとタツキが歩み寄る。
ミツヨ「……」
タツキ「……立テ」
ミツヨ「……」
タツキ「マダ、決着ガツイテイナイ」
ミツヨ「……まだ、何が起きたのか、定かではないが……少なくとも、私がイズナを見殺しにしたも同然ならば、貴様もイズナを殺したのと同じだ!」
タツキ「ココハ戦場ダ。来イ」
ミツヨ「貴様だけは、絶対に許さんっっ!!」
タツキ「カアアアッ!!」
ミツヨ「大典太ああああああああああっ!!」
大典太、咆哮を上げる。
すると節々にある歯車が回り始め、変形を始めた。
各部が小気味よい音を立て、遂には巨大な手と成った。
タツキ「!? 姿ガ!? 変ワッタ!?」
ミツヨ「うおおおおおおおおおおあああああああああああっ!!」
ミツヨ、巨大な手と成った大典太を右手に装着し、タツキに突進する。
タツキ「コケオドシガアアアアアッ!!」
ミツヨ「ぬうううう!! うあああああああっっ!!」
大典太の拳が、タツキにぶち当たる。
タツキ、受け止めきれず巨拳に激突する。
タツキ「グウウウウオオオオオオオオオオウウウウ!!??」
ミツヨ「大典太!
ミツヨ、一瞬拳を引き、更に拳を振り抜く。
拳と成った大典太のみが鉄砲玉の様に飛び、タツキを吹き飛ばす。
タツキ「グアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」
ミツヨ「……
突如、拳が開き、タツキに襲い掛かる。
タツキ「ナ、ナンダ!?」
ミツヨ「
巨拳がタツキを握り潰そうとする。
タツキ、間一髪体勢を整えて巨拳を押さえる。
タツキ「オアアグッ!!?? ツ、ブ、サレテェェェ! タマルカァアア!!」
ミツヨ「いいや。貴様はこのミツヨの大典太を以て、奈落の奥底へと仕舞わせてもらう……握り潰してなぁ!!」
尚も力が増していく巨拳。
タツキ、最後の力を振り絞る。
が、傷口が癒えるよりも先に出血が増していく。
タツキ「
ミツヨ「大典太ぁぁぁぁぁあああああっっっ!!」
ミツヨの力が圧倒したか、タツキの力が衰えたか。
徐々に手の平が閉じていく。
タツキ「ヌウウウウウウウ!? ウウウウウウウウ!!??」
ミツヨ「イズナアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」
決着。
タツキ「ギ、イ!? ア、ガ、ア、アアアアアアアアアアアア!!!??? ヨギ!? ヨギイイイイイイイイイ!!」
砕ける骨の音。
飛沫を上げる鮮血はミツヨにも降りかかる。
滴る血肉。
ミツヨ「……」
酷く、沈んだ顔をしていた。
黒よりも青く、青よりも暗い水たまりの様な。
何の気なく口許の血を拭うミツヨ。
ミツヨ「血だ……これは……誰の血だ……? 否……最早、些末なこと……」
大典太の身体から、ほのかに湯気が立ち込めている。
音もなく自身にこびりついた血肉を吸い取っているようであった。
大典太は鬼を喰らっていた。
ミツヨ「……鬼の肉は美味いか? 大典太」
大典太が、ゆっくりとその巨大な手となった身体を開く。
歯車が小気味よい音を立て、節々の部品が可動し、元の人型へと変形していく。
が、その色赤く澱み、往時の大典太とは形相を新たかにしていた。
ミツヨ「なんだか……とても、晴れ晴れとしているんだ……行こう、大典太……お前にもその赤が、似合っているぞ……フフフフフ……ハハハハハハハ……赤く……赤く、赤く染めよう……全てを、全てを……」
ふらふらと歩いていくミツヨ。
塔を登っていく。
第十六話へと続く。
お疲れ様でした。
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台本名を記入して頂けますと嬉しいです。
後日覗きに参ります。
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